文明が進むほど人間は物をかまなくなる?
文明が高度になればなるほど、人間は食べ物をあまりかまなくなるといわれます。硬い食べ物が嫌がられ、柔らかいものや口に入れたらすぐに溶けるようなもの(チョコレート、クラッカー、ケーキなど)が好まれます。むしろ早食いが求められる忙しい現代では、食べ物をいちいち念入りにかんで食べようという気にはならないかもしれません。
かむことは唾液(だえき)による高度な化学変化
しかし、かむということは単に食べたものを小さくかみ砕くだけでなく、唾液によってそれらを化学変化させることによって、私たちの身体の機能を健康的に維持しているのです。
私たちが食べ物をかむときは、唾液が出てきてそれらをかき混ぜ、飲み込みやすいように分解しています。口のなかの唾液は主にでんぷんを分解し、タンパク質は胃で、油や脂肪は腸で分解されるといわれます。
食べ物をよくかむことで食べ過ぎの欲望が抑えられること、さらには、よくかむことが病気を治すことにもつながることはあまり知られていません。このほか、成績のパッとしない子どもが食べ物をよくかむことで、物覚えがよくなり、成績が向上したという事実も報告されているのです。
かみまくればガンも消失
かむことのすごさが最もよく発揮されるのは、病気になったとき。末期ガンの人が正食的な食生活に切り替え、それと同時に食べたものをかんでかんでかみまくったところ、1ヵ月ほどでガンが完全に消えてしまったという奇跡的な事実もあります。
また、ある専門家の研究グループは、よく知られている発ガン物質に唾液を加えると、どう変化するのかという実験を続けてきました。その結果、天然物や人工物質を含めて、発ガン物質が突然変異する毒性は、唾液を30秒ほど加えるだけでほどんどが消えてしまったという驚くべき事実が判明したといわれます。
昔から食べ物をよくかむことが健康によいことはよく知られていますが、よくかむという習慣がガンの予防にも重要な役割を果たしていることを、私たちはよくかみしめるべきです。
かむことが生命のあり方を決定する
よくかむといっても、それは食事のときだけに限られており、1日のうちではごく短い時間でしかありません。しかし、この短い時間でもよくかむという行為は、いわば私たちの生命のあり方を決定づけているのです。
飽食時代といわれる現在、これほどグルメやうまいものの情報がはんらんしているのに、「食べ物が私たちの心身をつくっている」という正食の最も基本的な原則がきれいに忘れられています。ましてや、かむことが食べ物を身体に変える最初の行為であるという大切なことは、それ以上にないがしろにされています。
私たちは「かむ」という生命の原点にもういちど立ち帰り、かむことは健康な身体をつくるだけでなく、「考える」という人間の精神のレベルアップにもつながるという事実も忘れてはならないと思います。
次回へ続く
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