トリプルワークもあった副業・兼業の体験記

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副業をするときの注意点

テレワークやリモート会議など、コロナ過によって働き方改革が大きく進むなか、国も働く人たちに副業を推奨している。これまで副業といえば小遣い稼ぎといった程度のものだったが、最近ではスキルアップや自己成長などを目的とする副業も増えてきた。

フリー百科事典「ウィキペディア」によれば、「副業」とは収入を得るために携わる本業以外の仕事を指し、兼業、サイドビジネス、ダブルワークなどともよばれる。副業には、「ひとつの会社でずっと働くよりも視野を広げることができる」「社員の能力開発につながれば、会社の利益にもなる」「一定の収入が得られる安定した副業があれば、失業に備えた保険にもなる」などのメリットがある。

本業に加えて副業をすることは個人の自由であり、法律上は禁止されていない。その一方で、企業が社員の副業を禁止することも法律違反ではなく、特に以下のような理由から社員の副業を禁止したり、さらには懲戒解雇につながるケースもある。
1.長時間かつ過重労働の副業は本業に支障をきたす
2.副業に専念するために本業を辞めてしまう社員が出れば、人材やスキルが流出する
3.社員が本業と同じ業種で副業すれば、企業の内部情報が漏れたり、会社の信用を失墜する恐れもある。

一方、税務的には給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要となり、それによって住民税が増えたり、副業が会社に発覚する恐れもある。とりわけ、その会社が就業規則で副業を禁止している場合、副業をしていることがばれると就業規則の違反になることもあるので注意が必要である。

以上が副業に関する総論であるが、以下では筆者が実際に経験してきた副業の各論について述べていきたい。しかし、筆者は会社員ではなく個人事業主として複数の仕事をしてきたので、副業というよりは兼業といったほうがよいだろう。

学習塾と予備校教師の兼業

筆者である私は30歳のときに東京の会社を辞めて故郷の会津に戻り、一時は地元の会社に勤めたが、半年ほどで退社し、それからは自営業に従事していった。最初に立ち上げたのは、主に中学生に英語と数学を教える学習塾の経営。最初は少し苦労したが、それでも数年で徐々に生徒も増えていったのはラッキーだった。授業時間は夜の7~9時であるが、その準備のために1時間前の6時には事務室に入る。夕食はさらにその1時間前にとるので、学習塾を経営するための拘束時間は夕方から夜にかけての5~9時の4時間となる。

授業形式は学校よりも人数は少ないが、学校と同じ集団授業だったので、生徒が多いほど収入も多くなる。それなりの人数の生徒を集めれば、経費はそれほどかからないので、コスパ(コストパフォーマンス)的にはかなり良い仕事ともいえる。ただ、わたし的には教師という職業はまったく好きではなく、毎日4時間も夜の時間が拘束されるのは正直イヤだった(休みは日曜日だけ)。

ただ、夜の塾の仕事だけでは昼の時間がまったく空いてしまうので、隣のW市の予備校に問い合わせたところ、英語の先生が正式な教員になるので、新しい英語の教師を探していたとのこと。運よくトントン拍子に話は進み、英語の時間給教師に採用されることになった。担当する英語の授業は1日3コマで、1コマ(1時間)当たりの給与は3000円。

ところが実際にやってみると、大学・高校の浪人・現役生の授業時間は午前9時、午後1時、4時なので、その間にかなりの空き時間が生じる。つまり、1日9000円を稼ぐために準備の時間を含めて約8時間も拘束される。この空き時間はけっこう長く、最初は本などを読んでつぶしていたが、やはりもったいなさが募っていった。

2つの英語教師と実務翻訳のトリプルワーク

それからしばらくして以前の会社の友人から実務翻訳の仕事を紹介されたので、なんと3つの仕事を兼業することになった。翻訳原稿の下調べは主に予備校での空き時間に、パソコンによる日本語入力は学習塾の終了後や日曜日にやった。この3つの仕事の兼業期間は10年近く続き、文字通り目が回るほど忙しかったが、それでもなんとかこなせたのは、30代後半~40代前半という年齢的に若かったこともプラスになったのであろう。

それでもこうした心身的にかなりきつい状況が長続きするはずはなく、授業のコマ数を減らしてもらい、最終的には予備校の英語教師を辞めることにした。その結果、昼は翻訳、夜は学習塾の仕事というシンプルな兼業形態になり、肉体的にもかなり楽になった。しかし、それから10年もたたないうちに、いわゆる少子化の影響で生徒が減ってゆき、最終的には学習塾の閉鎖に追い込まれた。

副業や兼業をするときに考えるべきこと

こうしたかつての兼業時代を今振り返ってみると、いろいろなことが記憶によみがえる。そのひとつとして、いわゆる副業や兼業をするうえで大切なことは次のようなことかもしれない。まず最初に、複数の仕事を掛け持ちするうえで重要なことは、その仕事にどれだけの時間が拘束されるのか、またはどれだけフレキシブルに時間を調整できるのかを見極めること。

換言すれば、時間が拘束される仕事を複数掛け持ちするのは心身的に、そして時間的にもかなりきつい。やはりひとつの仕事の時間が固定されているのであれば、もうひとつの副業は時間的に融通のきくものでなければ続かないだろう。

さらに自らの経験からいえるのは、その仕事が自分に合っているのかどうか、すなわちその仕事が好きかどうかもかなり重要である。最初はあまり乗り気ではなかったが、やってみたら意外におもしろくなってきたという話もなくはないが、その仕事との相性、つまりその仕事が好きかどうかは直感的に分かるものである。私はもともと教師業は好きではなく、生活のために何十年もやったが、それでもやはり好きにはなれなかった。

一方、その仕事がコスパ的に良いようだという判断基準もあるが、それでもあまり好きではない仕事はいくらもうかってもそんなにおもしろくはないと思う。頭ではおいしい仕事だと思っても、心が受け入れなければ、やはり長続きはしないだろう。もっとも、どのような副業をするにしても、収入を得られるだけのスキルがあるというのは絶対的な条件である。

筆者のように自営業であれば、どのような仕事をいくつ兼業してもなんの問題もないが、ある会社に正社員として勤めている人が副業をしようとすれば、時間的にも心身的にもかなり限定される。その会社の給与が生活できないほど安いなど、条件的にかなり厳しいのであれば、それは副業ではなく転職の問題となる。そうなれば、どのように働いて生きていくのかというまったく次元の違う人生の問題になるだろう。

次回へ続く

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