陰陽から見た住宅ローン

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マイホームを購入するのは幸福度がピークのとき

現在では何千万円ものマンションや一戸建て住宅を全額キャッシュで買う人はほとんどいない。30年、35年という気が遠くなるような長期の住宅ローンを組んで、夢のマイホームを持つというのが現在の普通の光景である。

マイホームを購入する年齢としては30代が最も多く、次に40代、20代という年齢層が続いている。その理由はやはり住宅ローンの完済年齢が大きく関係している。35年の住宅ローンであれば、30歳からローンを返済し始めると完済するのは65歳、35歳では70歳、40歳では75歳になる。30代半ばの人が親の世代である70歳になった自分を想像できるだろうか。

しかし、そんなことをくどくどと考えていたらマイホームなんか絶対に持てないと言われそうだ。そこでそうした遠い将来のことはとりあえず脇に置いて、マイホームを購入しようという人の幸福度について少し考えてみよう。

一応安定したほどほどの会社に勤める大卒のサラリーマンであれば、30代といえば入社してほぼ10年が経ち、仕事にも慣れ、結婚して家族、さらには子どもがいる人もいる。このころには仕事や収入などの経済面、家族を含めた人間関係などにも恵まれ、いわゆる幸福度はかなり高くなっている。それどころか、仕事、家庭、経済的なゆとりなど、どれをとっても幸福度はピーク水準に達しているといってもよいだろう。普通のサラリーマンがマイホームを購入しようと決心するのはこうしたときである。

陰陽から見た人生の幸・不幸

しかし、このような時期を魔法のメガネである「無双原理(むそうげんり)」から見ると、少し意地悪な見方となる。無双原理とは正食の創始者である桜沢如一(さくらざわ
ゆきかず)氏が確立したもので、12の定理から成り立っている。その定理11は「陰が極まれば陽に転じ、陽が極まれば陰に転じる」というものである。これを私たちの人生の幸・不幸の程度に当てはめると、「不幸も最後にボトムを打てば幸福に転じ、幸福も最後にピークを打つと不幸に転じる」となる。

みなさんは道教のシンボルである「太極図(たいきょくず)」、そうあの白と黒の魚がからみ合ったような図をご存じだろうか。白の部分が陽(人生でいえば幸福)、黒の部分が陰(人生でいえば不幸)で、陽が最も大きいトップで陽が陰に転じ、陰が最も大きいボトムで陰が陽に転じる。

残念なことに、私たちの人生もこの宇宙の法則から逃れることはできないようだ。夢のマイホームをキツキツの予算で買ったりすると、そのあとには必ずこの法則通りの結末となる。陽(幸福)がピークを打って陰(不幸)に転じてしまうからで、くれぐれも幸福の絶頂期だからといって身分不相応なマイホームを購入しないように。

とりわけ夫の収入だけでは銀行の審査が通らないので、夫婦によるペアローン(夫婦のいずれかが主債務者に、もう片方が連帯債務者となる夫婦連名の借り入れ)を組んでマイホームを購入するといったケースはかなり危険である。そもそもペアローンを組むような家庭は、世帯収入からしてもギリギリの返済額でやりくりしているケースが多く、子どもが高校生や大学生になり、教育費がピークになっているところに新型コロナが直撃。夫婦のどちらかの収入が減って、たちどころに住宅ローンが払えなくなったという40~50代半ばの共働き夫婦が増えているという。

経済的なピークのときに教室兼事務所を建てる

実は筆者も経済的にもピークだった1992年に、母屋の前に教室兼事務所の建物(コスト的に最も安いといわれる真四角に近い総二階)を建てた。当時は株式バブルに続き、東京では不動産バブルも弾けていたが、ここ会津では建築ブームがピークに達していた。建物を発注した工務店では何十ヵ所もの現場をかけ持ちし、職人が来るのは数日置きだった。

信用金庫から母親の土地を担保に1000万円を借り、10年返済のローンを組んだが、学習塾、予備校、翻訳の仕事がどれも目が回るほど忙しく、金利や返済額などについてはまったく記憶がない。しかし、やはり宇宙の法則には逆らえず、それからしばらくしてどの仕事もガタガタと減っていき、収入は激減した。さらには子どもたちの大学進学も重なり、わが家の経済は危機的な状況に陥っていったのである。

35年先の未来ではなく35年前からの過去を見よう

ここでまた住宅ローンに話を戻すと、35年の住宅ローンについて、屋敷康蔵(やしき
やすぞう)著の「人生を賭けて『家』を買った人の末路」という本には、次のような興味深いことが述べられている。
「もし35年先の未来を想像するのが難しいなら、35年前の過去を振り返ってみましょう。現在の2020年から単純に35年を引き算してみると、バブル景気に向かう1985年ですね。一体、この35年間にどれだけ社会や世の中が変化したことでしょう」として、次のようないろいろな出来事を挙げている。

1985年は翌年から始まるバブル時代の前の年、そして90年代はバブルが崩壊し、山一證券や大手銀行などが倒産した暗黒の時期。1991年にはソ連が解体、1995年には阪神・淡路大震災、2001年にはアメリカで同時多発テロ、2008年にはリーマンショック、2011年には東日本大震災、2016年には熊本地震、2019年には超大型台風による甚大な水害の発生、そして2020年には新型コロナウイルスの世界的な感染拡大。

また、消費税も1989~2019年に3%→5%→8%→10%と上昇し、私たちの生活を圧迫している。このように過去35年間を振り返ると、社会経済情勢が激変し、私たちの暮らしも大きくその影響を受けた。

ところで、今(2021年)から35年後といえば2056年であり、それまでに日本の人口は現在の1億2617万人から8933万人になんと3700万人近くも減少すると予想される。この一事をもってしても、これからの日本が大きく変動するであろうことは容易に想像できるし、その方向もあまり明るいものではない。それでもマイホームを持つといういわば人生の目標ともいうべきものをあきらめるのは悲しいことなので、少なくともこれまで述べてきた陰陽の法則ぐらいは心に留めておいてほしいと切に願っている。

次回へ続く

この記事を書いた人
人生盛々男

人生盛々男(じんせいもりもりお)
福島県会津暮らしの翻訳家&株式投資家。
まだまだ現役の硬式テニスプレイヤー兼ランナー。

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