三毒を断ち、百難を逃れる梅干し
日本の伝統的な食べ物のひとつに梅干しがあります。梅干しの本家は中国といわれていますが、現在食べられている梅干しは日本の特産食品です。梅干しは日本の代表的な伝統食であると同時に、健康食でもあります。
病気で体調が悪く、まったく食欲がないときでも、おかゆに梅干しを添えれば、スッキリとお腹におさまってしまうことはよく知られています。梅干しは「医者いらず」「(毎日1個ずつ食べると)百難を逃れる」などといわれ、また平安時代に記された日本最古の医学書『医心方(いしんほう)』には「梅は三毒を断つ」と書かれており、梅干しは昔から毒消しの妙薬として利用されてきました。
三毒とは「水毒」「食毒」「血毒」を意味し、水毒とは体内の水分の汚れのこと(水あたりなど)。食毒とは暴飲暴食などにより、体内のバランスが乱れた状態(食中毒など)。血毒とは血液の汚れのことで、油の多いものやこってりしたものなどを常食していると、血液が酸性化して貧血や糖尿病になる可能性もあります。
梅干しはすばらしい自然の薬品
梅干しの具体的な効能とは次のようなものです。
- 梅干しに含まれるクエン酸をはじめとするいろいろな有機酸は、疲れの原因となる乳酸を抑え、疲労を回復する。
- また、クエン酸は血液をドロドロにする酸性を中和させ、弱アルカリ性に保つので、血液をサラサラにする。
- 梅干しは「若返りのホルモン」と呼ばれるパチロンを含むので、老化を防止する。
- 梅干しに含まれる有機酸は、腸のなかでめざましい抗菌作用を発揮し、食中毒を防止する。
- 梅干しには腎臓・肝臓の働きを促すので、二日酔いや乗り物酔いにも大きな効果がある。
このように、梅干しは単なる伝統食品というだけにとどまらず、まさに健康食品、さらには自然の薬品といっても過言ではありません。
調味梅干しを増やしたのは私たちの減塩志向の高まり
しかし、現在スーパーなどで一般に売られている梅干しは、本来の梅干しとはまったく違うもので、とても梅干しと呼ぶには値しないものです。本物の梅干しは「梅」「塩(自然塩・天然塩)」「しそ」で作るものですが、スーパーやコンビニの棚に並べられている梅干しには、これら以外のものがたくさん含まれています。それらは甘味料(水あめ・砂糖・ソルビットなど)、化学調味料、合成着色料などであり、パックの裏には「調味梅干し」と表記されています。
なぜこのような調味梅干しが増えたのでしょうか。その大きな理由は、「塩分のとり過ぎは健康によくない」という消費者の減塩志向の高まりです。塩分を少なくすれば長期の保存はできないので、保存料などの添加物を入れるのは当然の成り行きです。逆の見方をすれば、このような人工の梅干しを増やしたのは、私たち消費者であるともいえます。
昔は毎年梅の季節になると、各家庭では梅干し作りをしたものですが、今では梅干しは漬けるものではなく、買うものとなっています。それに、本来の梅干しは値段がかなり高く、いわば「ぜいたく品」になってしまったのは本当に残念なことです。
わが家の梅干しの作り方
ちなみに、わが家ではほぼ毎日梅干しを食べるので(焼酎のお湯割りに入れたり、梅酢入りの玄米がゆを作る-など)、毎年梅干しを作っています。その作り方は、かなりシンプルです。
- ヘタをとった梅(南高梅=なんこううめ)と塩(自然塩)をかめに交互に入れる
- 真夏になるとそれらの梅をザルに並べる
- 4~5日天日干しする(しそは使わない)
こんな梅干しでもけっこうおいしいですよ。
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