フリーランスが知らなければならないわが国の年金制度と年金上乗せ策

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国民年金と厚生年金の違い

日本は2階建ての年金制度になっており、1階部分は20~60歳のすべての国民が加入する国民年金(基礎年金)、2階部分は会社などに勤務している人が加入する厚生年金である。これにより、会社員や公務員などは国民年金+厚生年金という1~2階部分のすべてを受け取れるうえ、さらに恵まれた人は会社が積み立てた企業年金という3階部分の年金ももらえる。

厚生年金の保険料は企業側と会社員が半分ずつ負担する(その金額は収入に応じて変わる)。例えば、毎月の保険料が5万円であれば、会社員が実際に支払う金額は2.5万円となる。

これに対し、国民年金の保険料は全額自分で支払わなければならず、原則としてその金額は全員が同じ定額となっている。しかし、自分が受け取る年金額の半分は国が負担しているので、大ざっぱに言うと毎月の国民年金が6万円であるとすれば、これまで自分が納めた保険料からの給付額は3万円、残りの3万円は税金でまかなっていることになる。

会社員や公務員が納付する厚生年金の保険料は給与から天引きされるので、基本的に未納になることはない。一方、国民年金の保険料の納付も国民の義務になっているが、長期にわたって未納していると財産が差し押さえられる可能性もある。2018年度の国民年金保険料の納付率は約68%、これを逆に見ると未納率は32%に上っている。

自営業者のための年金上乗せ制度

自営業者やフリーランスなどの個人事業主は国民年金しか受け取れないので、国は彼らのために次のような任意加入の年金上乗せ制度を設けている。

国民年金基金

この制度は1階部分の国民年金しか受給できないこれらの人々のために1991年に創設されたもので、いわば2階部分の厚生年金に相当する。毎月の掛け金を自由に選択して任意に加入するもので(上限は7万円)、受取期間も定められていないので、終身年金として死ぬまで受給することもできる。

もっとも、この制度の目的は老後資金を自分で準備することを公的に支援することにあるため、一度加入すると基本的には自己都合で任意に解約することができない。ただし、家計が厳しくなってどうしても掛け金が負担できないときは、例外的に2年間の支払い猶予を申請することができる。

付加年金

毎月の国民年金保険料に付加保険料(400円)をプラスして納付すると、国民年金に付加年金が上乗せされる。その金額は「200円×支払い月数」となっている。例えば、20~60歳に付加保険料を支払ったとすれば、払込総額は400円×480ヵ月=19.2万円。これに対する付加年金額は200円×480ヵ月=9.6万円(年)。月額ではプラス8000円の付加年金を死ぬまで受け取ることができるが、付加年金と国民年金基金は併用できず、どちらか一方しか加入できない。

iDeCo(イデコ)

自分で作る任意の年金制度ともいうべきもので、個人型確定拠出年金とよばれる。加入者は毎月一定の金額を積み立て(掛け金を拠出し)、投資信託などの金融商品を自分で運用し、60歳以降にその運用益を年金または一時金として受け取る。

そのメリットのひとつは、株式や投資信託などの運用益には20%の税金がかかるが、iDeCoにはそうした税金もかからず非課税であること。しかし、原則として60歳までその資産を引き出せないというデメリットもある。また、運用商品は投資信託など株式がらみのものが多くなるため元本割れのリスクがあるほか、加入から資産の受け取りが終了するまで手数料がかかる(逆に言うと、課税所得を減らす減税効果もある)。

個人年金

前述した年金上乗せ策は国の制度としてスタートしたものであるが、個人年金は生命保険会社などが販売している保険の一種である。60歳や65歳といった一定の年齢まで保険料といった形でお金を積み立て、その後にその運用資産を退職金として一括、または年金として毎月受け取る。一般の生命保険と同じく、その保険料の一部は確定申告で控除できるが(上限は年6.8万円)、中途解約をしたときの返戻金(へんれいきん)は払込保険金よりも少ないというデメリットもある。

年金上乗せ策のメリットとデメリット

以上が主に自営業やフリーランスなどの個人事業主にとっての国民年金の上乗せ策であるが、それぞれの制度のメリットとデメリット、そしてそれらをどのように利用すべきかといったことなどはさておき、それらの本質的な意味について少し考えてみよう。

厚生年金や国民年金などの公的年金制度には、労使による保険料の折半納付、受け取る年金に対する国の半額負担といった大きなメリットがある。しかし、国民年金に上乗せするそれらの任意加入の制度とは、現在自分が積み立てたお金を何十年先という遠い将来に受け取るもので、インフレなどの影響をもろに受ける。現在そしておそらく将来的にも低金利が続くであろうという予測が現実となれば、積立金とほぼ同額のお金を受け取ることができればラッキーであろう。

現在の100万円は数十年先の100万円よりもはるかに価値があるというのは、今では経済の常識である(すなわち、確実なお金は不確実なお金よりも価値がある)。その意味からいえば、これまで述べてきた国民年金の上乗せ制度は、いずれもこの経済の常識に反している。もちろん、働けなくなる老後に備えて働けるときに自分の年金を作っていくというのはそれなりの合理性があると思われるが、いったいどれだけの個人事業主や自営業者がそうしたモチベーションと余裕をもってそれらの制度に加入しているのだろうか。

わが家の経済を助けてくれた不動産収入

自らの個人的な生活や経済を振り返ってみると、わずかな厚生年金と国民年金は本当にありがたいが、わが家の家計を実際に支えているのは不動産収入である。その原資は親が残してくれた土地であり、その収入金額もそれほど多くはないが、それでも毎月確実に入ってくるお金は毎日の生活だけでなく、もうからない出版翻訳の仕事や3人の子どもの大学進学も可能にしてくれた。

こうした個人的な理由を反映して、筆者は収益不動産(主に土地)に対してかなりのポジティブなバイアスを抱いている。少し極端に言うと、お金を稼げる不動産はどれほどお金を積み上げられても絶対に売らない。長期(5年以上)保有の土地を売却したときは約20%の税金がかかるということもあるが、それ以上にいったん手放した有利な不動産は二度と手に入らないからだ。1000万円の現金よりも、月5万円を稼ぐ不動産のほうがはるかに価値があると思っている。

わが家の不動産は親譲りのものなので、借金による不動産投資によって手に入れたものではない。それでも親の時代の収益不動産はかなり不完全なものだったので、私自身が何十年もかけて改良していった。その意味では親(父)が生んだ収益不動産をその二代目である筆者が育てていったといえるだろう。子どもと同じく、不動産もちゃんとお金を稼ぐようになるには、それなりの時間とお金をかけて育てていかなければならないのである。

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