相続の基本的な流れ

basic-pattern-of-inheritance 相続

スタートは遺産の相続評価

まず最初に知らなければならないのは、相続される人(被相続人)の財産の金額。遺産には現金や預貯金、株式、土地や建物などのプラスの財産と住宅ローンなどのマイナスの財産があり、後者のような借金や債務はプラスの財産から差し引いて相続評価額を計算する。

現金や預貯金はそのままの金額、株式は時価で評価する。また、建物も毎年市役所から送られてくる「固定資産税の納付通知書」に記載されている固定資産税の評価額なので簡単に分かる。

複雑なのは土地の評価で、その理由は登記簿謄本に記載されている地目(ちもく)に応じて、宅地・田・畑・山林などと種類が多いうえに、それぞれの形状や状態(傾斜地・道路に面していない-など)によって評価額が違ってくるからだ。

宅地はそこが接している公道の路線価(ろせんか)×面積、市街地の田や畑は宅地の評価額より何割か安い金額、その他の田はその種類に応じて路線価または評価倍率によって計算する。例えば、単純なケースとしてある宅地の面積が300㎡、路線価が2万円であるとすれば、その土地の相続評価額は 2×300=600万円 となる。

しかし、実際の評価額は土地の形状や状態、農地の種類などに応じてかなり複雑なので、相続に詳しい税理士または税務署の担当者に問い合わせたほうがよい。なお、路線価図は国税庁が毎年公表しており、インターネットで簡単に閲覧できるので、相続の対象となる土地の路線価にその面積をかければ、大ざっぱな評価額が算出できる。

被相続人が居住した宅地の優遇特例

一方、被相続人が住んでいた宅地の評価額は330㎡(約100坪)までは80%も減額される「小規模宅地等の特例」もあるので、これは絶対に利用したほうがよい。例えば、先の300㎡の宅地の通常の評価額は600万円であるが、この特例を使えば600万円×20%=120万円と相続評価額をかなり減額できる。

こうして被相続人の遺産のおおよその金額を算出したら、次は法律で定められた相続人の順位を知っておく必要がある。基本的な相続順位は配偶者(必ず相続人になる)を筆頭に、子ども→親→兄弟姉妹となっている。

相続人が受け取る財産の割合

また、法定相続人が受け取る財産の割合も法律で定められている。子どものいない夫婦であれば、配偶者がすべての財産を相続するが、子どもが2人いる夫婦の場合、夫が亡くなったとき、妻が夫の財産の1/2、残り1/2の財産を2人の子どもが分け合う。

しかし、被相続人が生前に遺言書(ゆいごんしょ)を作成すると、法律で定められた相続人の順位や財産の分割割合に優先して、遺言に記載された人が記載された財産の割合を相続することになる。

こうして被相続人の遺産額と相続人、そして相続割合が決まれば、次に知らなければならないのは遺産に適用される基礎控除額である。

遺産にかかる基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人数

例えば、配偶者(妻)と子ども2人が亡父の財産を相続するとすれば、法定相続人数は3人。単純に亡父の1億円の財産をこの3人で相続したとすれば、

3000万円+600万円×3人=4800万円 が控除されるので、相続税の対象となるのは5200万円。

こうした相続評価額に適用される相続税の金額は次のようになっている。

基礎控除を差し引いた遺産の金額税率控除額
1000万円以下10%なし
1000~3000万円以下15%50万円
3000~5000万円以下20%200万円
5000万円~1億円以下30%700万
1~2億円以下40%1700万円
2~3億円以下45%2700万円
3~6億円以下50%4200万円
6億円以上55%7200万円

各相続人の相続税額と配偶者の優遇特例

先のケースの場合、相続税の対象となるのは5200万円なので相続税額は、

5200万円×30%-700万円=860万円 となる。

これを通常の相続順位に従って相続すると妻が1/2、子ども2人が残りの1/2を均等に相続すれば、妻が支払うべき相続税額は430万円、子ども2人はそれぞれ215万円となる。

ただし、妻が法定相続分(この場合は860万円)のすべてを相続すれば、「配偶者の税額軽減の特例」によって1億6000万円までは無税となるので相続税はまったくかからない(一次相続の特例)。しかし、何年または何十年後にこの母が亡くなって子ども2人がその遺産を相続するときは(二次相続という)、こうした特例はないのでしっかりと相続税を取られることになる。

一方、生命保険金については「500万円×法定相続人数」までは無税となる。先のケースの場合、500万円×3人=1500万円 まで非課税となる。亡父が1000万円の生命保険に入っていたとすれば、これで860万円の相続税を支払ったうえ、140万円のおつりがくる。

1000万円とはいわず、たとえ500万円の生命保険でも、これを相続税に当てれば 860-500万円=360万円 と相続評価額をかなり圧縮できるので、生命保険をうまく利用すれば賢明な相続対策になる。 以上が基本的な相続のプロセスであり、こうした大きな流れを知っていれば、まったく無知のときよりも相続の不安はかなり少なくなるだろう。財産の所有者(被相続人)がまだ生きているうちに相続人がこうした相続の基礎知識を身につけていれば、相続が現実に起きてもそれほど慌てることはないと思う。

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