相続したいろいろな宅地の評価の具体例

evaluation-of-residential-land 相続

いろいろな形の不整形地

土地は同じ形状や状態のものはほとんどないが、特に問題のないきれいな整形地であれば、その土地の相続税評価額は「路線価×面積」で簡単に算出できる。しかし、現実にはそのような土地はまったくといってよいほど存在せず、ほとんどの土地は以下のようないわば欠点のある土地(いわゆる不整形地)である。

1.奥行きが長い
2.道路に面する間口が狭い
3.いびつな形をしている
4.がけや傾斜がある
5.公道に接していない(いわゆる無道路地)
6.広い宅地(広大地)

こうした土地は形の整った土地に比べて利用価値が低いことから、税務当局はいろいろな補正率を定めて、相続税評価額の減額を認めている。

税務当局が定めている補正率

それらの補正率には、「奥行価格補正率(その土地の奥行きが一般的な土地の奥行きよりもな長すぎたり短すぎる)」、「奥行長大補正率(間口に対して奥行きが長い)」、「間口狭小補正率(間口が狭い)」、不整形地補正率(形状が長方形や正方形ではなく、三角形や台形などのいびつな形をしている)」、「無道路補正率(土地が道路に面していない)」、「がけ地補正率(がけ地がある)」などがある。これらの補正率は国税庁のHPに~補正率表として公表されている。

これらの補正率はそれぞれ異なる補正項目なので、例えばいびつな形状の不整形地などの相続税評価のときは、「(路線価)×(奥行長大補正率)×(間口狭小補正率)×(面積)」というように、複数の補正率を適用することができる。

以下では、筆者が実際に母から相続した宅地をどのように評価したのか、そのいくつかの具体例を見ていこう(以下のすべてのケースでは小数点は省略)。

奥行きが長い宅地の評価

1.宅地Aのケース
地目:宅地
面積:835㎡(253坪)
間口:18m
奥行:46m
利用:貸家建付地(かしやたてつけち、土地と建物がともに自己所有)
地区:普通住宅地区
路線価:2.1万円(1㎡当たり)

間口に対して奥行きの距離がかなり長い長方形の土地で、その相続税評価額は次のようになった。

2.1万円(路線価)×0.9(奥行価格補正率)×0.98(奥行長大補正率)×835㎡(面積)=1546万円

広い宅地の評価

2.宅地Bのケース
地目:宅地
面積:1654㎡(500坪)
間口:45m
奥行:36m
利用:貸宅地(かしたくち、土地は自己所有・建物は賃借人の所有)
地区:普通住宅地区
路線価:1.6万円(1㎡当たり)

この土地は周囲の一般的な宅地と比べて著しく大きく、必要条件を満たしていたので、「広大地」として減額評価することができた。広大地の条件とは次のようなものである。
1.面積は三大都市圏では500㎡、それ以外の地域では1000㎡以上
2.戸建て分譲開発をするときに、私道の開設が必要である
3.大規模な工場やマンションなどを建てるに適していない。具体的には、駅から徒歩20分以上、周辺にマンションがない、容積率が300%未満

その結果、この土地の相続税評価額は次のようになった。

1.6万円(路線価)×0.52(広大地補正率)×1654㎡(面積)=1376万円

広大地補正率の計算は少し細かいが、相続税申告のとき(2016年)の広大地の減額率は最大で65%とかなり大きかった。また、その評価方法も地積(土地の面積)だけに着目したかなりシンプルなものだったが、2018年に土地の形状などの実態をより反映したものに改定され、減額率の割合も縮小した。

次回へ続く

コメント

タイトルとURLをコピーしました