わが家の墓じまい

桶 暮らし・文化

 あまり報道されませんが、今の60~70代の人にとって大きな悩みは、「墓をどうするのか」という問題ではないでしょうか。わが家は数年前にこの問題に終止符を打ちました。その答えはいわゆる「墓じまい」、それも完全に墓をなくしてしまいました。


 われわれ60代の夫婦が住んでいるのは、福島県会津のK市。家系は古く、墓石は江戸時代からのものを含め全部で21基ありました。近くに銀杏の大木があり、その落ち葉は毎年約10㎝。毎年夫婦2人で何時間もかけて2回の掃除を何十年もやってきました。そしてお盆の墓参りは約15分。最近ではその作業もきつくなり、しかも3人の子供はすべて東京住まい。「これ、どうする」。結論ははっきりしていますよね。


 2017年10月に菩提寺のお坊さんに魂抜きの読経をしてもらったところ(お布施は1万円)、聖なる墓石が単なる石に思えてきたのは不思議でした。そして墓石店に墓じまいの見積もりをお願いしたところ、やる気がまったくなし。面倒くさいのか、それともカネにならないからか。
 そこで知っている土建会社に見てもらったところ、15分で「35万円でやります」とのこと。「お、お願いします」。作業者3人で墓石をすべて撤去・処分してもらい、3日できれいな更地となり、土地をお寺に返しました。


 問題は中央の墓に埋葬されていた5柱(はしら)の遺骨ですが、しばらく菩提寺に預かってもらうことにしました。そして2019年6月に両親を除く先代3柱を海洋散骨会社にお願いして東京湾に散骨しました。手続きは驚くほど簡単で、料金は1柱2.2万円、計6.6万円でした。散骨証明書が到着した返礼にこうメールしました。


「人間の血液の塩分濃度は海水の濃度とほぼ同じだと言われています。ということは、人間は何億年もかけて海から進化して現在に至ったものだと思われます。そうであれば、人間が亡くなって自然に帰るということは、土に戻るのではなく、海に戻るのが歴史的にも最も理にかなったことだと思います」

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