持ち家それとも賃貸住宅の良し悪しはいつ分かるのか

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持ち家派と賃貸住宅派の主張

これまでも、そしてこれからも続くであろう、いわば永遠のテーマともいえる「持ち家」と「賃貸住宅」の論争。ネットワークで検索すると、それぞれの賛否が延々と続くが、持ち家派の主張を要約すると次のようになる。

  1. 住宅ローンは大変だが、それが終われば賃貸のように家賃を払い続ける必要はなく、また持ち家は資産になるので、老後の住まいも確保できる。
  2. ライフスタイルに合わせて自由にマイホームをリフォームできるので、住みやすい環境を自在に作り出せる。

一方、賃貸住宅派の主な言い分は次のようなものである。

  1. 生涯にわたる重い住宅ローンを背負うこともなく、転勤や家計の状況に応じて、また近所トラブルや地震などの自然災害などがあったときも自由に引っ越しできる。
  2. トイレや浴室、台所などに不具合が生じたときには、すべて大家の負担で修理・交換してもらえるので、維持費がまったくかからない。

それぞれの言い分にはそれなりの説得力があり、双方の主張を聞けば聞くほど、どちらが良いのか分からなくなる。ただ、実際に持ち家を購入しようと決断した人たちの理由は、こうした主張に基づくものではないだろう。

賃貸住宅に暮らしてきた子ども2人の4人家族の世帯(いわゆる標準世帯)が持ち家を買おうと決心するのは、今住んでいるところが手狭になり、子どもの部屋を確保するため、などの理由が普通ではないだろうか。少なくとも持ち家が資産になるので、それを財産として子どもたちに残そうといった理由などでマイホームを購入する人たちがいるとはとても思えない。それならば、持ち家それとも賃貸という論争を世帯の経済レベルと年齢という点を考慮して少し具体的に考えてみよう。

持ち家を購入できる条件と年齢

まずは経済レベルについてであるが、例えば仕事が不安定であまり収入がなく、ギリギリの生活を強いられている人たちは自分の家を購入するという選択肢はなく、賃貸アパートなどで生活するしかない。また、独り者の男女が自分だけの給料を担保にしてマイホームを買うという可能性もそれほど大きくはないだろう。ということは、持ち家を購入するか、賃貸住宅で済まそうかと悩むのは、頭金に当てられるそれなりの蓄えがあるうえ、ほどほどに安定した収入を得ている世帯ということになる。

一方、年齢という点について見ると、持ち家を購入できるのは収入の水準に照らして、30~40代の世帯に絞られるだろう。例えば、35年の住宅ローンを組むとすれば、ローンの完済年齢は35歳で70歳、40歳で75歳であり、45歳になると80歳になってしまう。このように考えると、35年の住宅ローンを組める年齢の上限は40歳前後であろう。

それでは仕事・収入・経済の各面で一応ゆとりのある30~40歳の世帯にとって、持ち家と賃貸住宅のどちらがベターなのだろうか。その決断はそれぞれの家庭が決めることであるが、ここで私自身のケースについて述べたいと思う。

仕事用の建物を建てたわが家のケース

私もほぼ30年前に1000万円の銀行ローンを組んで、母屋の前に木造の教室兼事務所を建てた。母屋の一角を改造して造った教室が手狭になったためで、長方形の総二階建ての箱のような建物である。出窓もない安普請の建物であるが、ひとつ自慢できるのは二階の教室は30人以上の生徒が入ってもビクともしないように、太い丸太を何本も組んでガッチリと造ってもらったことだ。

しかし、それから10年もたたずして少子化の影響から生徒が激減し、学習塾を廃業。銀行ローンもあちこちからお金をかき集めてなんとか繰り上げ返済したが、子どもたちの大学進学に伴う学費の仕送りとの両立ができなかったというマイナスの理由からである。

ところで、この建物は今はどうなっているのだろうか。二階の約10畳の事務室は調べもの、ブログの記事の作成、たまの仕事、読書などに毎日使っている。また、約25畳の教室は書庫のほか、ランニングマシンやダンベルなどを置いたトレーニングジムとしてときどき使用している。金銭的にはちょっと大変だったが、今ではこの建物を建てて本当によかったと思っている。私の毎日の居場所になっているし、その意味では十分に元はとったといえる。

持ち家・賃貸住宅の良し悪しが分かるのは数十年先?

こうした自身の経験に照らせば、その人にとって持ち家または賃貸の良し悪しが分かるのは、20~30年あとの60~70代ぐらいかなとも思えてくる。もちろん、これは30~35年という長期の住宅ローンを完済できたという前提があっての話である。ローンの返済が途中で挫折したとすれば、持ち家か賃貸かといった話題そのものが意味をなさなくなる。こうしたことは、若いときに学んだものが生きるのは、人生のかなりあとになってからということとほとんど同じである。

持ち家派の人がそのぐらいの年齢になって、「持ち家を購入してよかった」と思えればハッピーである。また、賃貸派の人も晩年になって「一生賃貸住宅でよかった」と思えれば、人生に悔いはないだろう。

次回へ続く

持ち家それとも賃貸住宅の良し悪しはいつ分かるのか
持ち家それとも賃貸住宅の良し悪し論争は今でも延々と続いているが、それぞれの主張にはそれなりの説得力がある。実は筆者も仕事用(住居用ではない)の建物を建てたのであるが、結果的には良かったと思っている。持ち家または賃貸をめぐる現況を考えてみた。

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