これが私の田舎暮らしです

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70%以上の人が田舎暮らしはしたくない

2020年11月14日付の朝日新聞に、「田舎暮らしにあこがれる?」という特集記事が掲載された。それによれば、「はい」という人が29%しかいなかったのに対し、「いいえ」と答えた人は71%にも達している。

「いいえ」と答えた人のその理由は、「買い物が大変そう」「医療機関が充実していない」「人間関係が難しそう」「文化・娯楽施設がない」など。一方、「はい」と答えた人の理由は、「自然が豊か」「のんびり過ごせそう」「静かに暮らせそう」「食べ物が新鮮」などである。

こうした意見や感想に対する筆者自身の見解はおいおい述べるとして、そもそも一般に言われている「田舎」とは具体的にどこを指しているのだろうか。インターネットなどで調べると、田舎暮らしの田舎とはほとんどが山里やへき地みたいなところを言っている。筆者もいわゆる田舎に住んでいるが、その私だってそんなところには暮らしたくない。

東京に住んでいる人から見ると、東京以外はすべて田舎であろう。私も東京に住んでいたときは、郡山や仙台でさえもかなりの田舎に思えた。実際、名古屋の友人のところに遊びに行き、地元の人たちと酒を飲んでいたとき、彼・彼女らは自分たちを田舎者だと言っていた。今私が住んでいる田舎から見ると、仙台や名古屋などは大都会である。

私が住む田舎とはこういうところ

筆者が暮らす田舎とは福島県会津地方のK市で、人口は減り続け、今では5万人もいない。市のほぼ真ん中に少し大きな川が流れており、それを境に市街地を西と東に分けている。西側はいわゆる商店街でかつては栄えていたが、今ではシャッター通りとなり、かなりさびれてしまった。

一方、東側はかつては街外れでなにもなかったが、数十年前にバイパスが通ったことから、今では大型店がたくさんある。ホームセンターが3店舗、スーパーが2、ドラッグストアが4、コンビニが10近く。また、近くにあるイオンタウンには大きなリサイクルショップもある。私が住んでいるのはこうした店がたくさんある市街地の東側で、それらの店にはどこでも車で数十分で行ける。

K市は正真正銘の田舎町であるが、田舎暮らしにあこがれない人たちの最大の理由である「買い物が大変そう」という見方はまったく当たっていない。また、「いいえ」の二番目の理由である「医療機関が充実していない」も当てはまらず、難病は別として、ガンなどの病気でも対処できる病院は会津にはいくつもある。さらに、三番目の「人間関係が難しそう」も農村部のことはよく分からないが、私が住む市街地では今では昔のような濃密な付き合いはほとんどない。

筆者から見て「はい」の理由である「自然が豊か」「食べ物が新鮮」(主に野菜や果物)などはかなり当てはまるが、「のんびり・静かに暮らせそう」はあまり該当しないようだ。田舎の生活も東京ほどではないにしろ、それなりに忙しいのですよ。

田舎暮らしのメリットとデメリット

田舎暮らしの最大の難点は、やはり自動車が不可欠ということであろう。車がなければ買い物はもちろん、病院や図書館などにも行けない。また、車を買うときに何百万円もかかるうえ、自動車保険や維持費などの負担もある。

しかし、スーパーに車で食料や生活用品を買いに行くと、買ったものをその場で車に積めるので、東京のように大きな荷物を抱えて何十分もフーフーと歩かなくてもよい。これは車を持つことの大きなメリットである。また、私は土日などにテニスをしているが、わずか数百円のコート代で何時間もテニスを楽しめるのも田舎暮らしのメリットのひとつかもしれない。

このほか、自然災害という点でも会津地方はかなり安全であるようだ。1964年6月にはM7・5の新潟地震が発生したが、隣の県で起きた大地震だったにもかかわらず、わが家を含む会津ではあまり大きな被害はなかった。また、2011年3月11日に発生した東日本大震災(M9)のときも、わが家では食器棚や書棚から食器や本が乱れ落ちることもなかった。

さらに、2019年10月に襲来した巨大な台風19号は中通り地方(郡山や福島など)に深刻な水害をもたらしたが、会津ではそれほど大雨も降らなかった。このように地震と台風という自然災害に対しても、会津盆地は周りの山々に守られているのかもしれない。

これに対し、デメリットとしては会津の冬は寒く雪が降ることに加え(冬になると関東地方がうらやましい)、東京に行くには少し、海外に行くにはかなり不便である。このほか、東京のように立派な美術館や演劇・コンサートホールなどもないので、文化レベルの高い人にとってはつまらないところであろう。ほかの田舎と同じように仕事という点についても、東京のように多種多様でおもしろい仕事はほとんどないので、特に若者にとっては魅力のないところかもしれない。

田舎でも東京の仕事ができるリモートワーク

もっとも、翻訳業をしてきた筆者もそうであるが、リモートワークが可能であればこんな田舎でも東京の仕事ができるので、東京に住む必要はまったくない。私に限っていえば、リモートワークというコトバがなかった30年以上前から、今でいうリモートワークで翻訳の仕事をしてきた。

私は東京圏では京王線のつつじヶ丘に10年、そのほか小田急線の相模大野、東西線の浦安、都営新宿線の西大島などに短期間暮らしたことがあるが、特に住みやすかったという印象はない。今の田舎暮らしも満足度でいえば50~60%であり、それなりにメリットもあればデメリットもある。

それでも、少し年をとってきたことも影響しているのかもしれないが、今の自分にとって「都会暮らしにあこがれる?」と質問されたら、その答えはほぼ「いいえ」である。

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