フリーランスの泣きどころともいうべきシビアな現実

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数十年に及ぶフリーランスの仕事

大学を卒業してJ通信社に入社、そこで6年勤めたあと、30歳で故郷である会津のK市に帰ってきたことはすでに述べた。それから30年以上にわたり、いわゆるフリーの仕事をして生活してきた。今ではこうした仕事はフリーランスと呼ばれ、正社員として会社に勤めることなく、自分の能力とスキルだけで食べていく個人事業主(自営業)を指す。

筆者である私の具体的な仕事は、次のようなものだ。

  1. 母屋前の別宅で学習塾を経営
  2. 隣のW市の予備校で時給制の英語教師
  3. 翻訳会社や専門出版会社から依頼される英日の翻訳

時代の波をもろに受けるフリーランス

しかし、それらの仕事量と収入の有無や程度は時代や経済の波、さらには新型コロナウイルスによる感染症などにも大きく左右される。もっとも、こうしたことはなにもフリーランスだけに限らず、企業や会社員、非正規労働者にもすべて当てはまる。ただ、その影響の度合いは会社員とはまったく比べものにならず、いわゆるもろに降りかかってくる。

例えば、2020年3月初めに安倍政権が打ち出した新型コロナウイルスの感染対策からも、そのことははっきりと分かる。具体的には、臨時休校に伴って仕事を休んだ保護者には、正規・非正規雇用を問わず、1人当たり日額上限8330円の助成金を支給する支援策が発表されたが、フリーランスや自営業者はその対象にならなかった。しかし、その後にやっと業務委託契約を結んでいるフリーランスにも、1日当たり4100円が支給されることになった。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた4月7日の緊急経済対策では、コロナ過で大きな影響を受けたフリーランスなどの個人事業主にも、最大100万円の持続化給付金が支給されることになった。

少子化で失った2つの仕事

筆者についていえば、翻訳の仕事は細々ながらあるものの、自営の学習塾と予備校の英語教師の仕事は完全に消滅してしまった。具体的に言うと、ひとりで経営してきた学習塾と英語教師として勤めていた予備校は、いずれも生徒がいなくなって廃業に追い込まれてしまったのである。

その原因は単なる少子化であるが、私はそのすさまじさと怖さを身をもって経験した。人口学者や専門家などから見ると、日本の少子化の予測などは簡単につくのであろうが、その当時は生徒が毎年ガクンガクンと減っていく原因などについてはサッパリ分からなかった。こうしたことは本当にフリーランスの泣きどころである。

一方、病気をしなければ国民健康保険でも特に不都合はないが、こと年金に関しては会社員と比べてまったく不利である。大手企業の正社員であれば、国民年金+厚生年金+企業年金といういわば3階建ての年金をもらえるが、フリーランスなどの個人事業主は国民年金だけ。会社員は現役時代にそれだけ多くの社会保険料を払っているんだと言われれば、まあその通りであるが、年金を受給する年になると両者の厳しい格差が身に染みる。

フリーランスにお金を貸さない銀行

年金と並んで、フリーランスの大きな泣きどころは、銀行のローンが使えないこと。つまり、銀行はフリーランスなどの個人事業主にはお金を貸してくれないのである。それで住宅や事務所などを建てるときには現金を投入するという方法しかなくなる。

私は田舎の住宅バブルのころに2階建ての教室兼事務所を建てたが、ローンを十分に返済できるだけの所得はあったものの、銀行(信用金庫)は私にお金を貸してくれなかった。仕方がないので、建物予定地の土地名義人である母に連帯保証人になってもらい、それなりの広さのその土地も担保に入れてやっと1000万円を借りた。そのときは、フリーランスって本当に信用力がないんだなーとつくづく感じたものである。

こうした経験を通じて、銀行の本質がよく分かったような気がする。その信金にはそれなりの定期預金をしてきたが、そうした「実績」はまったく評価されず、カネを貸すときはしっかりと担保(主に土地)をとる。自分たちは絶対にリスクはとらず、そうしたものはお客に押し付け、利息だけはしっかりいただく。

最近では個人事業主にもお金を貸す銀行もあるとはいうが、それは住宅ローンは低金利でもうからず、まともな融資先もあまりないという単純な理由によるようだ。フリーランスなどの個人事業主に対する銀行のスタンスは、昔も今も基本的には同じであろう。

会社員と同じようにマイホームがほしいフリーランスもいるだろうし、運転資金が必要なときもある。そうしたときに自己資金だけでは足りないとすれば、いったいどうすればよいのか。私の場合は母名義の土地があったのでなんとかなったが、そうした担保になるものがなければ、1000万円ぐらいの建物も建てられないのか。

インターネットを見ていたら、筆者よりもさらにシビアなケースがあった。Aさんはある大手企業に10年間勤めたあとにフリーランスとなったが、会社を辞める前に35年の住宅ローンを組んでマイホームを購入した。住宅ローンを借りたのは労働者のための銀行である労働金庫(ろうきん)だったが、会社を辞めて1ヵ月ほどたったころ、その銀行から電話があり、次のように言われた。
「大手企業の社員だから信用してお金を貸したのであり、フリーランスには貸さない。なので、残りのローンを今すぐ全額支払え」

それまで返済が滞ったり、遅延したことなど一度もなかったのに、である。その労働金庫の支店長は、「人を信用して貸しているのではなく、大きな会社の社員だから貸したんだ」と繰り返していたという。いやはや、フリーランスって本当にお金には苦労するものですね。

次回へ続く

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