空売りの条件と注意点
「空売り(からうり)」とは、証券会社から株を借りて売るという取引で、信用売りとも呼ばれています。空売りの主な条件は、次のようなものです。
- 証券会社に信用取引の口座を開設する
- 6ヵ月以内に売った株を買い戻さなければならない
また、一般的な注意点は次のようなものです。
- 売り残(まだ買い戻されていない空売りの残高)の多い銘柄は避けたほうがよい
- 逆日歩(ぎゃくひぶ、売り方が買い方に支払う金利)が発生している株には要注意
- 「新規売停止」はもちろん、「増し担保規制」などの信用規制がかけられている株にも注意
こうした条件や注意点を除けば、空売りは単純に現物や信用の買いの逆の取引ということもできます。
買いとは違う心のスタンス
しかし、実際に空売りをしてみると、現物や信用の買いとはまったく違う心のスタンスになります。なんといったらよいのか、現物・信用の買いに比べてものすごい恐怖感に襲われるのです。
買いであれば、株価が買値を少し割り込んでも、それほど慌てるということはありません。ところが、空売りした株が売値を少し上回っただけで、「こりゃー、青天井まで行くぞ」などと、パニック状態になるのです。もちろん、ストップロスの注文は出してあるし、客観的にはそんな株はほとんどないのですが。
どうしてこのような心理状態になるのか。おそらく、私たちは生まれたときから、利益を出すにはすべて安く買って高く売るという考えや習慣が骨の髄(ずい)まで染み込んでいるからではないかと思います。つまり、ないものを売るということが心から理解できないのではないでしょうか。
一見有利に見える両建て
一方、こうした単純な片張り(かたばり)の空売りのほかに、株価の横ばい圏などでは、買い銘柄と同数の同じ株を空売りするという、いわゆる両建て(りょうだて)というやり方もあります。これは目先の安値で空売り銘柄を買い戻し、そのあと買い銘柄が上昇したところを売れば、ダブルの利益が得られるという考え方です。
この手法は、高値を売って安値で買い戻すという片張りの空売りよりは安全であるとも言われます。確かに理屈としてはそうかもしれませんが、わたし的にはこうした両建てはやめたほうがよいと思います。そのような難しい局面の渦中にいるときに、そんな器用なことはできるはずがない(正確には「なかった」)からです。
やりようによっては便利な信用取引
ところで、信用取引というと、すぐに自己資金の何倍もの取引ができる(いわゆるレバレッジをかける)ことの良しあしに話が向かいます。しかし、わたし的には自己資金の範囲内で信用取引をすることには、なんの問題もないと思います(私は主に買いですが)。
現物取引では、電卓で売買金額を計算して損益を出さなければなりません。これに対し、信用取引であれば取引報告のメールに差金決済(さきんけっさい)の数字が表記されており、一目で損益額が分かります。ましてや、信用取引の金利が安い現在では、現物取引より信用取引のほうが便利であると私は思っています。
現物株の売買だけにこだわらず、信用取引も買い売りも含めて、自己資金の範囲内で少しずつやっていったらどうでしょう。株式取引の方法も広がるし、空売りに伴う恐怖感の克服にも少しはつながるのではないでしょうか(もっとも、無理に空売りをする必要はありませんが)。
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