季節の野菜で旬の味覚を味わおう

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季節の変化を映した野菜

同じ土地からとれるものでも、穀物のように保存のきくものと、大根や葉っぱ、ネギなど保存のきかないものがあります。だから、保存のきく作物は年中食べてもよいが、保存のきかないものはそれがとれるとき、すなわち旬の時期に食べるのが最もよい。

春には「苦みを盛れ」というように、ふきのとうや春の七草などは、冬の間に動きの鈍った私たちの体を刺激し、体内にたまった老廃物を排せつしてくれます。春はすべての動植物が新陳代謝を活発にし、入れ替わろうとする時期です。

暑い夏には「水気や酸味をとれ」といわれるように、熱い外気から体を冷やして体調を整えるために、ウリ科のキュウリやスイカ、ナス科のトマトやナスなどが育ちます。そして、私たち人間も多くの汗をかいて体の水分や脂肪分を減らし、すっきりと体をスリムにするのが自然の姿です。

秋が訪れ、涼しい季節になると、イモ類、クリや柿などの果物が甘みを増し、秋の味覚が数多く出回ります。実りの秋には、夏と冬のあいだの季節にふさわしい中庸(ちゅうよう)の性質を持つ穀物(米・雑穀)やイモ類など、でんぷん質を多く含む貯蔵のきく作物が数多くとれます。

そして、冬には寒さから体を守るために、体を暖めてくれる陽性のニンジン、ゴボウ、レンコン、大根などの根菜類が出回ります。これらの作物は保存のきく耐寒性の野菜です。

陽性のエネルギーがつまったもち

もうひとつの代表的な季節の食べ物といえば、正月につくもち(餅)があります。もち米は蒸しただけでも、赤飯やおこわで食べられます。このおこわを食べても、乳の出の悪いお母さんの乳が張ってくることはありません。

ところが、みそ汁のなかにもちを一個ずつ入れて毎日食べていると、胸が張ってきて、ものすごく乳が出るようになります。もちのなかにはそれだけの力が含まれているのです。それは蒸したもち米を臼(うす)に入れて、杵(きね)で力いっぱいペッタンペッタンとつきあげたときの圧力、すなわち大きなエネルギーを秘めた陽性の力なのです。

人工的な野菜とは欠陥商品

私たちは季節というものを重く考えなければなりません。ところが今では、温室・水耕栽培、ビニールハウスの野菜が当たり前になり、季節というものがむちゃくちゃになっています。冬の寒い時期に、キュウリ、ナス、イチゴなどが店頭にうず高く積まれています。これらは夏の野菜であり、寒い時期にこんなものを食べていたらたちまち体が冷えて、いろいろな病気にかかってしまいます。

こうしたビニールハウスや化学肥料で育てた野菜は、太陽エネルギーの下で育った露地の野菜に比べて、栄養は1/3以下しかないといわれます。ある研究者の実験によると、化学肥料や農薬栽培によるナスとトマトを自然栽培によるそれらの野菜と同時に採って保存状態を比べたところ、前者のナスとトマトは1週間ほどでドロドロになってしまったが、自然栽培の野菜は次第にひからびていったものの3週間以上も保ち、決してドロドロにはならなかったという。このように、ビニールハウスや化学肥料で育てられた野菜は、自然栽培の旬の作物に比べて栄養もエネルギーもはるかに劣っています。

旬の野菜で季節を味わおう

作家の獅子文六(ししぶんろく)はその著『食味歳時記』のなかで、「季節のものがうまいのは、われわれ人間の体も季節のなかにあるからだ」と記しています。また梅崎和子著『陰陽調和料理で健康』によれば、90歳を過ぎて亡くなった義母はエンドウ豆のご飯が食卓に上ると、「今年も長生きしてよかった」と自然に対して生かされている幸せを素直に感謝していたという。

このように、私たちは旬のもので季節を感じ、人間も自然の一部であることを意識するのです。自然界は私たちの生理的身体の変化に応じて、人間に必要なおいしいものを与えています。季節感を大切にし、旬の野菜を食べましょう。

次回へ続く

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