わが家の相続放棄の現実

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相続放棄の期限とその背景

相続には2つの重要な期限がある。そのひとつは被相続人が亡くなった日(相続の開始日)から10ヵ月以内に、相続税の申告と納税を行わなければならないという期限であるが、これは比較的よく知られている。しかし、相続の開始日から3ヵ月以内に相続放棄の手続きを終了しなければならないというもうひとつの期限(「熟慮期間」という)については、あまり知られていないようだ。

最近は相続放棄がかなり増加しているといわれる。親が借金などの債務を抱えていたという分かりやすい理由だけでなく、田舎の家と土地を親から相続しても、売るに売れない・貸すに貸せないといった現実も増えているからで、そんな不動産はまさに「負動産」でしかない。

難しい不動産の扱い

そうした負の遺産を相続したら、毎年生い茂る雑草を刈りに行ったり、近所からなにかとクレームが来たり、さらには野生動物などが住み着いたら、それこそ目も当てられない。そして建物を解体すれば何百万円もの費用がかかるうえ、更地にすれば土地が住宅用地から非住宅用地に変わるので、固定資産税は最大で6倍になる。逆に言うと、住宅が建っている土地には「住宅用地特例」という減税制度が適用されるため、固定資産税は更地に比べて最大で1/6、都市計画税は同1/3に減額される(ただし、対象は土地の税金のみ)。

姉の相続放棄

さて、わが家の相続放棄はこうした理由によるものではなかったが、母の死に伴って遺産相続に直面した筆者にとって、姉の相続放棄はちょっと得難い経験だった。親が残した家や土地などの不動産の多くが現在では「負動産」になっていることは姉自身もよく分かっていたようで、私からの相続放棄のお願いには快く同意してくれた。

私は姉が相続を放棄するのが望ましい理由として、次のような説明をした。

  1. 母の現金はほとんどなく、それどころか何年にもわたってわれわれ夫婦が母を介護してきたことで、かなりのお金を使った。
  2. 遺産に占める農地(田)がかなり多い。近くの農家の人に米作りを委託し、生産米の一部を受け取っているが、川の管理費などの経費のほうが収入よりも多く、今や田はマイナスの財産である。
  3. 宅地もこのK市のような田舎町では幹線道路沿いの有利な土地でないかぎり、売却や賃貸も難しく、その一方で固定資産税は毎年確実にとられ、その負担は想像以上に重い。

母の死に伴う今回の相続の法定相続人は、子である筆者と姉の2人だけなので、姉の相続放棄によってようやく相続税の申告の手続きに着手できるようになった。

すぐに到来する相続放棄と相続税の納付の期限

ところで、相続放棄の期限である3ヵ月と相続税の申告・納税の期限である10ヵ月は、一見するとかなり余裕のある期間のように思える。しかし、実際に体験してみるとかなりスムーズな手続きの進行が求められ、まったく余裕のないあっという間の忙しい期間であることを痛感した。

ちなみに、10ヵ月という期限までに税務署に相続税の申告・納付をしないと、本税(相続税)に加えて無申告加算税や延滞税などのペナルティ(罰金)が科される。特に延滞税は期限から2ヵ月までは相続税額の3~4%(年)、その期日を超える部分については9~10%というかなり高い金額になるので、10ヵ月という相続税の完納日は絶対に守らなければならない。

次回ではこの相続放棄の手続きについて、少し詳しく説明していこう。

次回に続く

この記事を書いた人
人生盛々男

人生盛々男(じんせいもりもりお)
福島県会津暮らしの翻訳家&株式投資家。
まだまだ現役の硬式テニスプレイヤー兼ランナー。

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